「AI選考」で変わる就活。学生はどう向き合うべき?

2018.05.29

19年卒の就職活動が本格的になる中で、今年注目を集めているのが「AI選考」というキーワード。大手企業ではエントリーシートや面接などにAI(人工知能)を導入する動きが広まりつつあります。AI選考が広まることで、就活は今後どのように変わっていくのでしょうか? そして、学生はどのように対応していけばいいのでしょうか? 採用コンサルタントの谷出正直さんにAI選考の最新事情を伺いました。

<目次>
1. ES選考、適性診断、面接をAIが行う時代がやってきた
2. AI導入で企業は「学生とのつながり作り」に力をかけられる
3. AI選考は学生にとってチャンス?
4. AI選考に落とされない学生とは? 

ES選考、適性診断、面接をAIが行う時代がやってきた

2017年に実施された18年度卒の採用では、ソフトバンクがエントリーシート(ES)選考にIBMの「ワトソン」を導入し、ES選考にかかる時間を75%削減したことが話題になるなど、いくつかの大手企業がAIを導入。AI就活元年といえる年でした。そして、「19年卒の採用活動ではさらに多くの企業がAI選考を取り入れる動きが見られ、今後本格的に広まっていくでしょう」と谷出さん。これからの就活において、AIはもはや意識しなければならない存在になってきているのです。 

ひと言でAI選考といっても、ES選考、適性診断、面接など導入のパターンはいろいろあります。

 

AI選考の導入例

  1. ES選考にAIを導入(ソフトバンク、NEC、住友生命保険、サッポロビールなど)

    自社の採用傾向などをAIに学習させ、AIがESの合否判断をします。企業にとってはESを読む時間を大幅に減らすことができ、採用活動を効率化につなげられるというメリットがあります。
  2. 適性診断にAIを導入(ANA、三菱商事、損保ジャパン日本興亜など)

    これまでの適性テストではマークシートの解答しか判断材料がなかったのが、AI導入によって解答にかかった時間などから迷っているかどうかまで読み取れるようになりました。性格、成長予測、自社へのマッチング度などを知る手段として活用されています。
  3. 一次面接にAIを導入(アキタ、ナベルなど)

    従来の一次面接にかわって、AI面接に導入する企業も増えています。スマートフォン越しにAIの質問に答えていくため、学生は自分の都合のいい時間に自宅で面接を受けることができ、企業にとっても時間・場所にかかわらず多くの人に面接を受けてもらうことができるというメリットがあります。

このほか、ロボットやAIスピーカーを面接に活用している企業もあります。

リクルートキャリア「就職みらい研究所」が実施した調査によれば、すでにAIを採用に導入している企業は0.4%。AI導入を検討中の企業は全体で7.5%、従業員数5,000人以上の企業では23.4%という結果でした(※)。大企業ほどAI選考導入を検討しており、今後もますますAI選考が広がっていく可能性があります。

※出典:『就職白書2018 -採用活動・就職活動編-』 リクルートキャリア  就活みらい研究所

 

AI導入で企業は「学生とのつながり作り」に力をかけられる

企業がAI選考を導入する理由としては、まず採用活動の効率化が挙げられます。採用に掛かる人手、コストを減らす一方で、採用のミスマッチを減らし、より自社にマッチする優秀な学生を採用したいというのが多くの企業のねらいです。

「売り手市場と言われる昨今、企業はこれまで通りの採用方法では優秀な学生を採用することが難しくなってきています。学生に興味を持ってもらい、最終的に自社を選んでもらうためには、会社の魅力をさまざまな手段で伝えなければなりません。今まで以上に学生とコミュニケーションを取る機会を増やし、つながりを深めていくことが必要なのです。その機会を増やすためにAIが注目されているのです」(谷出さん)

AI導入によって膨大な数のESを読む時間を削減することができれば、その時間を対面での面接にあてることができます。つまり、AIによる客観的なES選考を通過した“採用したい学生”に向き合う時間が増えるわけです。そして面接を通してより深く学生を知ることができ、自社の魅力を知ってもらう機会にもつながります。

また、従来は大量のエントリーに対して一部しか面接できなかったところ、AIによる一次面接を実施することで大勢の面接に対応でき、ESだけでは見落としてしまうような人材を見つけられる可能性があります。

AI選考は学生にとってチャンス?

AI選考について、学生からは否定的な反応も多数あります。ディスコが19年卒の学生に実施した調整では、「AIに書類選考の合否を判定されること」について約半数が否定的な回答でした。また、「AIに面接試験の合否を判定される」ことについては、7割近くが否定的な回答という結果に(※)。

※出典:『キャリタス就活2019学生モニター調査(2018年3月)」』ディスコ

 

ネガティブな印象をもたれがちですが、AI選考が広まることで学生にはどんなメリットがあるのでしょうか?

「学生にしてみれば、人ではなくAIに合否判定されることに対する不安があるのは当然のこと。しかし、従来のように人がESの選考をしたり、面接したりする場合では、担当者の主観や好みが合否結果に影響を与えないとは言えません。その点、AIによる選考では合否の基準が明確で、客観的に判断されます。

また、エントリーと同時にAIで面接を受けられるようになれば選考の間口は広がり、チャンスが増えるともいえます。面接を受けるための時間や場所の制約がなくなるので、地方の学生や授業などで都合をつけにくい学生も効率よく就職活動を進めることができます」(谷出さん)

 

AI選考で落とされない学生とは?

では、今後AI選考が広まっていく中で、学生はどのように向き合っていけばいいのでしょうか。「取りつくろうことなく、自然体で選考を受けるのがいちばん」と谷出さん。

「企業が採用活動を通して知りたいのは、学生の本当の姿です。AI選考では、面接を通過するために理論武装をしたり、自分の本来の性格を隠して表面的に取りつくろったりすることは通用しません。AI選考の“対策”を考えるのではなく、自分は将来何をしたいかをしっかりと考え、自分の軸をぶらさずに就活に臨むことが大切です」(谷出さん)

AI選考を導入している企業も多くはES選考や一次面接のみで、二次、三次と選考が進めば、社員が時間をかけて面接をする流れはこれまで通り。AI選考はあくまで社員が面接をする前の事前ステップであり、面接を有意義にするためのものにすぎません。就活成功につなげるためには、最初から最後まで自分の想いをしっかりと伝えることが大切です。

 

監修:谷出正直(たにで・まさなお)

新卒でエン・ジャパンに入社。新卒採用支援事業に約11年携わる。2016年に独立し、企業の採用支援やコンサルティング、採用アナリストとして活動。メディアへの寄稿、セミナーや研修の講師、人事・経営者向けの勉強会の主催などを行う。新卒採用に関係する企業、大学、学生、採用支援会社、メディアと深い信頼関係を構築する。

取材・文/村上佳代