学生時代、会いたい人にはどんな場所でも行った─なでしこVoice・濱田真里

2017.11.22

海外で働く日本人女性のリアルな声を伝えるインタビューメディア「なでしこVoice」。編集長の濱田真里さんがこのメディアを立ち上げたのは大学生の時でした。

「情報がないなら自分で発信しよう」と考え、取材した人数は在学中に100人、これまでの7年間で800人以上。学生という枠にとらわれず、やりたいことを突き進めてきた結果、「海外就職のことなら濱田真里に聞け」と言われるまでに。濱田さんは自身のキャリアをどのように選んできたのか、そしてどのように自身のネットワークを広げてきたのか、お話を伺いました。

濱田真里(はまだ・まり)
1987年生まれ。早稲田大学教育学部卒。就活中に海外就職の情報が少なく自身が困った経験から、2011年に海外で働く日本人女性のインタビューメディア「なでしこVoice」を立ち上げる。大学卒業後、通信事業会社、編集事務所を経て、2013年からはネオキャリアにて、アジアで働きたい日本人を応援するサイト「ABROADERS」の編集長として活動する。

就活を終えた1週間後に作った1枚の企画書

—まず、「なでしこVoice」を立ち上げたきっかけを教えてください。

大学2年の秋ごろに『マイクロソフトでは出会えなかった天職』(ダイヤモンド社)という本を読んで、海外で働くこと、社会起業家という生き方に興味をもちました。自分もこんなふうになりたいと思って、じゃあ実際に世界を見てみなきゃと。2カ月後に休学届けを出して、7カ月かけて22カ国を回りました。

世界一周を終えたあと、日本で就活をしながら海外就職の情報も集めていたのですが、Webで調べても海外で働く女性のキャリアや子育てなど、私が求めている情報はほとんど見つからなかったんです。そこで、情報がないなら自分で調べて発信しようと思い、「なでしこVoice」の立ち上げを決意しました。

—実際に立ち上げるまでに、どのような行動をしたのですか?

大学4年の終わりごろ、就活を終えた1週間後に、「なでしこVoice」立ち上げの企画書を作ったんです。私がやりたいこと、つまり、「海外で働く日本人女性のリアルな声を取材する」というコンセプトを整理して、友だちにプレゼンして、「協力してほしい!」と声をかけました。

学生時代に作った「なでしこVoice」の最初の企画書。

そしたら、日本にいる留学生や海外に興味がある友人が何人か集まってくれて。「大企業に就職するだけが正解じゃない」、「いろいろな働き方があるはずだし、日本にもっと多様性があったら生きやすくなるよね」という私の考えに共感して応援してくれました。

みんなの意見を聞いて構想をブラッシュアップするうちに、エンジニアの友人が「Webサイトで発信しよう」と言ってくれて、みんなが手伝ってくれるならとサイトの立ち上げを決意しました。3カ月かけて準備して、大学5年生だった2011年の6月に「なでしこVoice」を立ち上げました。

最初のインタビューは1カ月後に実施。アジアで働いている女性に実際に会いに行って、お話を伺ったのです。それから卒業までの8カ月で100人に取材しました。

現地まで会いに行って100人にインタビュー

—在学中に100人取材したという数に驚きです。取材する方はどうやって見つけたのですか?

最初は人づてで、世界一周したときに出会った方に紹介をお願いすることが多かったですね。企画書を作って、「会いに行くので取材させてください」とメールして。断られたことは一度もありません。みなさん、自分が海外で働くなかで苦労をされていて、その経験を発信してくれるなら、と前向きに協力していただける方が多いです。

—すべて現地に行き、直接会ってインタビューしているんですよね?

LCCでアジアに飛んで、安宿に泊まりながら各国を周って、最初の1カ月で30人ほど取材しました。いま思えば、体力勝負のところがありましたね(笑)

—スカイプなどで話を聞くこともできますが、濱田さんが「実際に会う」ことにこだわる理由は?

実際に会うことは、私にとってすごく大事なことなんです。直接お会いすることによって、“におい”とか“手触り”のある話を聞くことができますし、会うことによって自分も当事者意識をもって話を聞くことができます。それに画面ごしだと、プライベートの話はしにくいかなと。

—実際に会ってリアルな声を聞くことが「なでしこVoice」ならではの価値につながっているんですね。そこまで本気になれた原動力はなんですか?

「なでしこVoice」の活動が自分の将来につながるという確信がありました。立ち上げて最初の1年は全く反響がなかったのですが、この情報を必要としている人がいるはずだと。私自身がそのひとりだったので。だから、自分がやらなきゃいけないという自負がありましたし、結果が出るまでは限界を決めずにとことん続けようと思っていました。

それに、実際にお会いして「発信します」と言った以上は、形にしないと顔向けできないじゃないですか。相手に対してはもちろん、自分に対しても“約束”になる。やり遂げる原動力としてはそれが大きかったと思います。やっぱり会うって大事ですよね。

「発信すること」を軸にしたキャリア選び

—卒業後も「なでしこVoice」の活動を続けていますよね。卒業からいままでのキャリアを教えてください。

世界一周や「なでしこVoice」の活動を通して、海外で必要とされる人材になるためにはまず日本で働いてスキルを身につけることが大事だと気がつき、新卒では通信事業会社に就職しました。「なでしこVoice」の活動を認めてくれたというのが入社を決めた理由のひとつです。平日は会社で働き、夜中や週末を使って現地取材や執筆、イベントなどを行っていました。

仕事と「なでしこVoice」の活動を両立していたのですが、働いて半年経ったころに、以前取材させてもらったジャーナリストの山本美香さんがシリアで亡くなる事件が起きたんです。衝撃を受けて、自分はこのままでいいのかと悩みました。私がやりたいことは、ライフワークとして多様な生き方を発信すること。迷った末、「いまやりたいことがあるのに先延ばしにする理由はない」と、入社から1年後に退職しました。

—その後は、どんなことを始めたのですか?

発信するスキルを身につけるため、編集事務所に就職しました。半年ほど経ったときに、いま働いているネオキャリアの社長からFacebookで「アジアで働く人のインタビューサイトを作るので立ち上げをしてほしい」と声をかけてもらって2013年に転職して、現在まで「ABROADERS」というWebメディアに編集長として関わっています。

現在は、「なでしこVoice」、「ABROADERS」ともに海外で働く人の生き方を伝える仕事という点で共通点があり、どちらの活動も相乗効果があるので、会社からは「海外で働く意義や思いを発信していれば自由にやっていいよ」と理解してもらっています。

2016年からは海外拠点へ異動し、マレーシアとタイで合わせて1年半ほど生活していました。「説得力をもって海外で働く意義を伝えるためには、まず自分が体験しなければ」と異動希望を出したんです。2017年夏に帰国して、今後しばらくは日本を拠点に活動していきます。

「なでしこVoice」と「ABROADERS」の名刺。

—大学時代から「なでしこVoice」の活動をブレずに続けてきたからこそ、ご自身が本当にやりたい「発信すること」を軸にしたキャリアを築いてきたんですね。

そうですね。会社の名刺も使っていますが、キャリアのはじまりであり、軸となっている「なでしこVoice」の名刺もすごく大事です。いまは両方がいいあんばいにミックスされて、ものすごく働きやすいです。

濱田さんの「キャリアづくりのルール」

  1. 一度決めたら、結果が出るまでとことんやり抜く
  2. どんな場所でも、直接会いに行く
  3. やりたいことは先延ばしにせず、すぐにやる
  4. 説得力をもって伝えるために、自分が体験する

つながりはメンテナンスが必要

—取材やイベントなどで毎日たくさんの名刺を交換されていると思いますが、どのように管理していますか?

新卒のころからEightを使っているのですが、いま1600枚ほどの名刺を登録しています。帰宅後に名刺を並べて、写真を撮ってEightに登録するのが日課です。

移動が多い生活なので、クラウドで管理できるのはありがたいですね。例えば、インドネシアで取材中に「ほかには誰を取材したの?」と聞かれたときに、その場でEightを検索して名刺を見せることもできるので便利です。

—ネットワークを広げていくために意識していることはありますか?

やっぱりまずは、「直接会う」ことです。話を聞きたい方に自分でコンタクトを取って会いに行く。その結果、ほかの方をご紹介していただいて、というサイクルで人脈が広がっています。ネットで簡単につながれる時代だからこそ、1対1でちゃんと会うことを大事にしたいですね。

2つめは、「つながりのメンテナンスをする」こと。名刺を交換して終わり、SNSでつながって終わりではなく、お会いした方の活動をその後も追いかけるようにしています。お会した後にメッセージを送ったり、その方が開催するイベントに参加したり。情報は待っているだけでは降ってこないですから、自分から動くことが必要だと思います。そうすれば、ネクストアクションにつながるはずです。

そして3つめは、「自分から情報を発信すること」。情報をもらうだけでなく、相手が興味をもちそうな情報があったら、「こんな資料がありますよ」などと伝えることを意識しています。相手にとってもつながっている価値のある人になれるか、というのが大切かなと思っています。

Eightでネットワークを広げる。

納得して進むために、一人称で選択する

—つながりを本物にするために、自分から行動することが大事なんですね。最後に、これからのキャリアを考えている学生にアドバイスをお願いします。

自分が納得できる選択をすることが大事だと思います。「私が」「私は」という一人称で選ぶことが、納得感をもって思いっきり進むためには必要。やりたいことがあるのなら、自分に向いているかどうかを判断するためにも、一度は全力でやってみるといいのではと思います。

私が「なでしこVoice」を始めたとき、いまのような活動は想像していませんでした。でも、全力で取り組むことで、自分ならではの道を進むことができました。もちろんこれからも、多様性のある生き方を発信する活動を続けていきます。

How to “ROCKET START”

濱田さんが考える「学生のうちにやっておくべきこと」

  1. なるべく遠くを目指す
    「学生だからこのくらい」と限界を決めずに、遠くを目指して、いまやれるだけのことをする。
  2. 海外を見て視野を広げる
    時間の融通がきくうちに広い世界を見て、視野を広げる。
  3. 自分を応援してくれる友人を大事にする
    本音でぶつかりあえて、背中を押してくれる友人をたくさんつくる。

写真/布川航太 取材・文/村上佳代