「自分がやりたいこと」を大声で言える人が、強くなる─ラブグラフ・駒下純兵

2018.03.05

カップルや家族の幸せな一瞬をカタチにする出張フォト撮影サービス「Lovegraph(ラブグラフ)」。運営する株式会社ラブグラフは、代表取締役社長を務める駒下純兵さんが大学3年生の時に立ち上げた会社です。きっかけは、駒下さんが「人を幸せにしたい」という想いで始めたカップルの撮影。

高校では帰宅部、大学に入学した時点では「やりたいことが明確だったわけではなく、友だちと遊んで、普通に思い出をつくるんだろうなと思っていた」という駒下さん。自分が好きなことを見つけ、学生起業という道を実現した背景にあったのは、「たくさんの人に会いに行き、自分がやりたいことを伝え続ける」という圧倒的な行動力でした。

駒下純兵(こました・じゅんぺい)
1993年生まれ。関西大学在学中からフォトグラファーとして活動。2014年から「写真を通して人を幸せにしたい」という想いで撮影を始めたカップルの写真がSNSで人気となり、全国から撮影依頼が入るように。依頼に対応するために全国のカメラマンネットワークを築き、2015年2月、大学3年の時に株式会社ラブグラフを設立。現在もフォトグラファーとして撮影をするかたわら、代表取締役社長として財務、事業計画、人事、プロモーションなどを担当。

写真を通して人を幸せにする。大学2年で気づいた「なりたい自分」

—ラブグラフ設立までの経緯を伺いたいのですが、そもそもカメラを始めたきっかけは?

大学1年の時に加入したミスコンを運営する学生団体で、写真を楽しそうに撮っている先輩に出会ったんです。「こんなにおもしろい人が夢中になるカメラってどんなものなんだろう?」と思って、自分でもカメラを始めたら、すっかりハマってしまって。先輩の撮影について行って技術を磨き、2年生の時にはミスコンのイベントや取材などでメインで撮影を任せてもらえるようになりました。

—カップルの写真を撮る活動を始めたのはいつごろですか?

大学2年の後半です。きっかけは2つあります。

1つめは、所属する学生団体の一大イベントのときのこと。イベントが終了した時に周りのスタッフが達成感で涙を流していたのに、僕だけ全然泣けなくて。その時に、もともと写真を撮って人に喜んでもらうことが嬉しくてカメラが好きになったのに、いつの間にか「写真を認められたい」というモチベーションで行動していたことに気づいたんです。それで、原点である「人に喜んでもらえる写真を撮る」ことに立ち返り、カップルの写真を撮るようになりました。

もう1つのきっかけは、2011年にBEAMSで展開していた「恋をしましょう」というキャンペーンです。写真家の川島小鳥さんが撮影したカップルの写真がすごく素敵で、ずっと記憶に残っていて。自分でもそういう幸せな瞬間をカタチにする活動をしたいと思い、カップルを撮影する活動につながっていきました。

—大学2年の後半で、自分のやりたいことが明らかになったんですね。その後、カップルを撮った写真がSNSで話題になっていったんですよね。

最初は友人カップルに声をかけて無料で撮影し、Twitterにほそぼそとアップしていたんです。それを見た当時の友だちで共同創業者の村田が、写真をまとめて「ラブグラフ」のWebサイトを2カ月くらいでつくってくれて。そうしたらすぐに全国から撮影の依頼が届いて、仕事として受けるようになりました。それが、大学2年の終わりごろです。

すぐに僕ひとりでは受けられない量になったので、全国にカメラマンネットワークをつくり、マネジメントをするようになりました。その後、大学3年の2月に株式会社ラブグラフを立ち上げました。

—ご自身を取り巻く環境が一気に変わったんですね。迷いや不安はなかったんですか?

迷いはそんなになかったです。当時はまだラブグラフの活動だけで食べていこうとは思っていませんでしたし。単位はほぼ取り終わっていたので、時間的にも問題ないだろうと。いまでも後輩に「単位は早めに取れ」って言いますね。学生生活の後半でやりたいことがみつかった時に単位が残っていると邪魔なんで。

インターン参加中に起業。事業提携の相談を持ちかける

—起業したのは大学3年の2月とのことですが、周りは就活の真っ最中ですよね。駒下さんは就職する選択肢もあったんですか?

自分の気持ちとしては、ラブグラフの活動を続ける道が7割、就活する道が3割くらいでした。学生起業に対する不安はあったので、1回就職して勉強してから起業したほうがいいかもという考えもあったんです。ただ、ラブグラフの活動を通していろいろな企業の方にお会いするなかで、だんだん起業する決意ができました。

—実際に、就活はしたのですか?

大学3年の終わりに、1社だけ、リクルートのインターンに参加しました。でも、実はこの時はもう起業を決めていて、インターン参加中に法人登記したんです。

ラブグラフの事業拡大を考えた時に、結婚情報誌の『ゼクシィ』と業務提携できたらいいなと思ったんです。でも、一学生がリクルートのような大きな会社に正面から行っても相手をしてもらえないだろうなと。そこで、学生という立場を利用してインターンに参加し、中の人と知り合ったら『ゼクシィ』の担当者を紹介してもえないかなという気持ちで応募しました。

—インターンに参加して自分の会社との事業提携を持ちかけるなんて、大胆ですね!

そんなヤツは僕くらいだったと思います。周りは優秀な学生ばかりだったので、普通にしていたら印象に残らない。そこで、2週間のインターン期間中にラブグラフを法人登記する、という作戦で目立とうとしました。そうしたら、人事の方が「君、おもしろい子だね」って声をかけてくれて。それをきっかけに、ラブグラフの事業や、『ゼクシィ』と仕事をしたいことを伝えたら、『ゼクシィ』の社長さんを紹介してもらいました。

「なんで、ラブグラフを会社にしたの?」って社長さんに聞かれた時に、「使命感です。僕がやらなかったら、誰がカップルの写真を撮る事業をするのだろうと思った。だから会社にしました」と答えました。そしたら、「正しい!」と言われて。その後、いろいろな担当さんとつなげてもらって、リクルートとはいまもお付き合いさせてもらっています。

—会社にしたタイミングで「ラブグラフの活動を100%やっていく」と決めたのですか?

そうですね。大学4年の5月に、一度は就職した共同創業者の仲間が戻ってきたので、そこからは本格的にやっていこうと決めて、夏からは拠点を東京に移しました。授業はゼミだけあったのですが、先生に「いま東京に行かなきゃいけないと思うんです。卒論は出すので後期は出席扱いにしてください」と約束して。認めてもらったのはありがたかったです。

—きっと、日々の授業態度がよかったからですね。

会いたい人にメッセージを送ることに、リスクなんて1つもない

—さきほど、「ラブグラフの活動を通していろいろな企業の人に会った」とおっしゃっていましたが、一学生で企業の方にコンタクトを取るのは難しいように思えます。どのように人脈を広げていったのですか?

本を読んで感銘を受けた方、好きなCMを手がけるクリエイター、ベンチャー企業の経営者、Twitterでおもしろい発言をしている方など、気になる方やもっとお話を聞きたいと思った方にはどんどん自分からコンタクトを取って会いに行きました。逆に「会おうよ」と誘われた時も、積極的に会うようにしていました。

コンタクトを取る方法としては、主にSNSを活用していました。例えば、その方のFacebookを調べて直接メッセージを送ったり。自分と会社のこと、ラブグラフをどんなサービスにしていきたいか、相手の方にお会いしたい理由などを書き綴って、送信するだけです。

—直接メッセージを送るのって勇気が入りますよね? 返事は来るものですか?

すぐに返信が来た方もいれば、先方がメッセージに気づかなくて半年後くらいに返信が来たという方もいました。著名な方にもメッセージを送りましたが、意外とみなさん会ってくれたという印象ですね。というか、学生だから会ってくれたのかなと思います。

社会人になるとまともな用事がないと会ってもらえないと思いますが、40歳、50歳くらいの方が学生から連絡をもらう機会って、そう多くないと思うんです。学生からメッセージをもらったとしても、先方も「なんだ、この学生?」なんて思わないだろうし、思ったとしてもすぐに忘れるだろうし。メッセージを送ることで自分が失うものは何もないので、だったら想いを伝えておこうと。学生の特権ですよね。

企業の方に連絡することを怖がる学生が多いけど、会いたい人に連絡することに、何かリスクってありますか? 返事がなかった時に自分がちょっと落ち込むくらいです(笑)。だから、会いたい人にはどんどんコンタクトを取ったほうがいいと思います。

—確かに、リスクはないですね。実際かなりの方に会ったのですか?

そうですね。実際にお会いして話をするなかで、起業をサポートしてくれた方もたくさんいます。

お会いした方のひとりに、こんなことを言われたことがあります。「いまの世の中で求められているのは完璧にできる人ではなくて、自分がやりたいことを大きなことで言える人だ」と。その通りだと思いました。

よくよく考えたら、学生が完璧になれるわけがない。だから自分は、「ラブグラフを通して幸せな瞬間をたくさんつくりたい」ということを言い続けることが大切なんだと、その時に実感しました。そして、その結果として、応援してくれる人が増えてきたのだと思っています。

会い行くなら、「学生にあまり知られていないスゴイ人」

—SNSで会いたい人にメッセージを送る際に、工夫していたことはありますか?

ただ「会いたい」とだけ伝えるのではなくて、相手の方のことをよく調べて、何を聞きたいかをしっかり伝えるようにしていました。先方は当然忙しいので。時間を割いて会ってみたいと思ってもらえるように、自分の考えを伝えることが大事かなと思います。あとは、SNSで有名になっていてみんなが会いたがる人は倍率が上がるので、そこまで学生に知られていないけど業界ではスゴイ人にメッセージを送ってみるのがいいと思います。

もう1つ、SNSでつながっている人数が多いからスゴイというわけではなくて、重要なのはつながりの中身。5人でもいいから、その人について深く語れるような人をつくっておくといいと思います。

—人脈を広げるのに、名刺が役に立ったことはありますか?

学生時代にEightでもらった名刺を管理していたのですが、会社名や職種で検索できるのが便利だなと思いました。名前は覚えてないけど、会社名はわかるっていうケース、よくありますよね? そういう時に、Eightを使えば会社名で検索できますし、マーケティング職の人に会いたい時は職種で検索することもできる。当時の僕は気になる人をFacebookで調べることが多かったのですが、会社名では検索できないんで。目的や相手に応じて使い分けるといいかもしれません。

 

失敗するなら早いほうがいい。だから、とりあえずやってみる

—たくさんの人に会って、自分がやりたいことを言い続けてきた先に、いまのラブグラフがあるんですね。最後に、「やりたいことが見つからない」「好きなことがあるけど進路に迷っている」という学生に向けて、メッセージをお願いします。

以前、ある人から、「人生は大きな決断ではなくて、毎日の小さな決断の積み重ねなんだ」という言葉をもらいました。僕自身、大学1年の時に「カメラを買おう」という小さな決断があったから、いまの自分につながっています。「ちょっと面倒だな」「失敗したらいやだな」と思った時に小さな一歩を踏み出すことで、人生を変えるような出会いがあるかもしれない。

それに、失敗するなら早いほうがいいと思うんです。もし、いまやりたいことがあるなら、行動しないなんてもったいない。やりたいことが見つからないという人は、まだ自分がやったことながないことを積極的にやってみるといいと思います。いろいろ試していくうちに、自分の世界が広がっていくはずです。

 

How to “ROCKET START”

駒下さんが考える「学生のうちにやっておくべきこと」

  1. 単位は早く取る
    やりたいことが見つかった時に邪魔にならないように、早いうちに単位を取っておく。
  2. 時間とお金で言い訳しない
    「時間がない」「お金がない」でやりたいことを諦めず、できる方法を考える。
  3. やったことがないことを積極的にやる
    自分がまだやっていないことをしてみると、新しい世界が広がるかも。世界を見るのも大事!

写真/島村緑 取材・文/村上佳代