「HRテックを通じて日本のキャリア教育を変革し、誰もが”自分にとっての正解”を思考できる世の中をつくりたい」-日本IBM株式会社 シャルマ ボニー 仁

2018.11.24

「日本のキャリア教育を改善したい」と語るのは、日本IBM株式会社・シャルマ ボニー 仁さん。学生時代から様々な国での生活を経験してきたシャルマさんは、海外での経験を経て、国際政治や歴史認識問題について興味から関西学院大学に進学。その後、日本のキャリア教育の在り方に疑問を抱き、HRテックの道へ進みました。

様々な国の方々と関わってきたシャルマさんだからこそ感じる日本のキャリア教育への違和感と、見えつつある改善への道筋。ご自身の生い立ちから、現在のキャリアに至るまで、お話を伺いました。

シャルマ ボニー 仁(しゃるま・ぼにー・ひとし)
1995年・大阪府生まれ。幼少期~学生時代を日本、カナダ、アメリカ、ドイツ、インドネシアなど様々な国で過ごす。中学3年生から高校を卒業するまでは、インドにて一人暮らしも経験。あらゆる国で居住経験を積んだからこそ、国際政治や歴史認識問題に深い関心を抱き、大学進学のタイミングで関西学院大学への進学を決意。大学卒業後、日本IBMに就職し、現在は人事に特化したコンサルティング部門を担当。

成果報告のルートをシステム化して、働きやすい環境づくりを。

-現在はどのようなお仕事をされていますか?

現在は「日本IBM」という会社で、ワークデイ事業変革という、主に人事に特化したコンサルティング部門で働いています。簡単に言うと、人事制度の改革を実行するために最先端のシステムを導入するお仕事です。

日本の企業は人事に関して、世界の他企業から数年遅れをとっていると思います。その理由は、誰がどこでどのくらいの価値を生み出しているのか、またその価値を測る基準が何なのか、ということが可視化されていないからです。その2点が不透明であるが故に、効率的に戦略を立てられない企業が多いのです。

それらを改善するために、各企業の人事に「ワークデイ」というシステムと、IBMのAI「ワトソン」を掛け合わせて導入していくのが僕らの仕事です。「ワークデイ」は、すべての人事業務を一元化して、人事の方々のバックオフィス業務量を大幅に軽減しつつ、戦略的人事を支援してくれるシステムです。また、あらゆる数値を正確に計測できるため、現状のマイナスポイントを改善しながら、効率的な戦略立案を立てることもできます。

「ワークデイ」自体は厳選された6社のベンダーが取り扱っており、そのベンダーの中の1社が弊社「IBM」です。そこに、僕らは弊社の看板商品であるAI「ワトソン」を掛け合わせて導入し、日本企業の人事を、少しでも世界にキャッチアップさせるためのお手伝いをしています。

-現在働いていて、自分の仕事の魅力は何だと思いますか?

戦略系の人事コンサルタントって、提案をしてもその企業に受け入れられるかわからない、あるいは提案が通ったとしても社内でなかなか定着しないことが多いのです。勿論、社内の事情等もあると思うのである程度は仕方がないことだと思うのですが、新しいシステムを嫌がる方が一定数いらっしゃるんですよね。

一方、僕らが取り扱っている「ワークデイ」は”システム”なので、導入し始めたら上の人がどう言おうがそれに従わなければいけなくなってしまうんです。他社のシステムとは違って、ゼロからカスタマイズすることができないSaaSなので、良くも悪くも日本の今の人事制度に合わせることができず、企業の人事制度を強制的にグローバルスタンダードに引き上げてくれるシステムということです。

某日経大手企業で多く見られる問題点は、「誰に誰が報告をしているのかが明確ではない」ということです。大手企業になればなるほど、社員の数が増え、部署内の役職も多くなります。部長がいるのに、なぜか部長補佐がいて、その上副部長、副部長補佐もいる、なんて状況が多発しているため、部下がどの上司に仕事の進捗を報告しているかが不明確になってしまうのです。

仕事の報告相手が不明確だったり、報告したのにも関わらず上司にその報告結果が正確に伝わっていなかったりといった、社員を困惑させる要因を一気に整理してくれるのがワークデイです。クライアント企業の社員さん、その中でも特に若手の社員さん達に働きやすい環境を提供でき、更にその企業の成長の一因を担えるところが、僕らの仕事の魅力ですね。

 

-成果報告のルートがシステム化されていないと、若手の社員さん達が働きづらいということですか?

若手、先輩社員双方が働きづらいと思います。例えば、ある部署に上司が3人居たとして、3人のうち2人はあまり面倒見が良くない人だとしましょう。そうすると、残りの1人が若手の面倒を見ることになりますよね。面倒を見てもらう若手からしてみたら、「良い上司に出会えてラッキー」と思うかもしれませんが、面倒を一手に引き受けている上司は「働きすぎ」になるわけです。過労死につながる可能性もあります。若手社員も、良い上司に出会えるかどうかは賭けであり、出会えなかった時のリスクが高いですよね。全く面倒を見てくれない上司に当たってしまった場合、成果報告を円滑に行うことは出来ず、人事評価を正当に行ってもらえない可能性があるでしょう。

つまり、成果報告のルートをシステム化することで、若手・先輩社員どちらのストレスも軽減でき、win-winな関係を構築することができます。

 

-成果報告のルートに関して、問題意識を持っている企業はどれくらい存在するのですか?

かなり少ないと思います。企業に限らず、就職活動をしている学生さんの中にも、人事制度や評価制度に目を向けられている方は少ないように感じます。

つい最近、自分でキャリアセミナーを主催したのですが、集まってくれた学生さんのほとんどが「ベンチャーだったら新規事業立案ができる」とか、「大手は海外に飛び回って大きな仕事をできる」とか、そういうところばかりを見ていました。自分がその企業に実際入社したら、どのように評価を受け、上司はどれくらい自分にフィードバックをくれるのか、そもそも部下を育てることが人事評価の対象になっているのか、という点に目を向けられている方はほとんどいませんでした。そもそも、「人事評価や成果報告のルートの不明確さが問題視されていない」ということ自体が、日本の人事の問題なのだと感じています。

「将来は、日本のキャリア教育を改善していきたい。」

-就職活動はどのような軸で進め、なぜ最終的にIBMを選んだのですか?

将来、日本のキャリア教育を改善したいと考えていたので、就職活動は人事・人材・コンサル業界を軸に進めました。

また、最終的にIBMを選んだ理由は、世界一、多種多様性を尊重している会社だと感じたからです。IBMには、国籍・宗教・性的アイデンティティはもちろんのこと、あらゆる人々の考え方そのもの尊重する風土があります。野鴨精神って言うのかな?他の鴨からしたら「こいつ何やってんの?」みたいなことも、ただバッシングするのではなく尊重して考える、という会社の風土です。そこが良いなと思いました。

HRテックが進化する中で、僕はそれが日本の開国ツールだと思っています。キャリア教育に携わる上でも、そもそもITを理解していないと自分が目指しているところに近づけないと思ったので、まずはHRテックや人事の現状と未来を学べる会社が良かったんです。なので、多種多様性という会社のカルチャーが自分にしっくりきたこと、最終的に自分がやりたいことを学べる環境があったこと、この2つがIBMを選んだ理由です。

 

-学生時代はどのような活動をしていたのですか?

先に、僕がいつどこの国で過ごしていたのかをお話ししますね(笑)。まず、生まれは大阪です。小4からカナダに行き1年半過ごし、アメリカに1年、インドネシアに半年、日本で1年過ごし、その後中3から高校卒業まではインドで一人暮らしをしていました。そして、最終的に大学生になって日本に戻って来たという感じです。

 

-なぜそんなに長期間海外にいらしたのですか?

父親の教育方針ですね。「日本にいると甘ったれるから」という理由でした(笑)。あとは、「インドで生きて行けるんだったら世界のどこでも生きていけるから行け」と言われましたね。当時は無茶だと思いましたが、本当にその通り育ったように思います(笑)。

 

-突然インドで一人暮らしを始めた時は、それまでの生活とギャップがあったのでは?

ギャップしかないですね(笑)。学校が標高2,000メートルのところにありすごく寒かったのにお湯がなかったり、本当に1日3食カレーが出たり(笑)。カルチャーショックは大きかったです。

あとは高2の時に、鶏を自分でしめたことがあります(笑)。お金があんまりないのに、サッカーをしていたから食べる量が多かったんですよね。当時、長期休暇中は食堂が昼しかオープンしておらず、晩御飯は自炊していました。ある日晩御飯の献立をルームメイトと話していたら、「肉が食べたい」という話になって。鶏肉屋さんに行ったら、鶏肉1kgで220円(110ルピー)だったんです。日本だったらそれでも安いと思いますが、当時はそれを払うのが惜しいほどお金がありませんでした。一方、生きた鶏は70ルピーだったんですよね。「半額以下ならこっちにしよう」と、生きた鶏を買いました。

とはいえ、どうやって鳥をしめたら良いか全くわからなかったので、なんとなく考えて、首をグッとしめてから、熱湯にぶち込んで、羽をとって…。あの時は、それまでの人生で1番重い「いただきます」をしました。もう2度としたくないですね。

 

-インドでの生活に慣れるまで、時間はかかりましたか?

慣れるまでに1年半はかかりましたね。でも、慣れてしまってからは本当に生活が楽しかったです。逆に、日本の大学に進学して日本生活を始めてからは、時間の拘束に堅苦しさを感じました。インドでは、「次何するの?」と聞くと、「何スケジュール考えてるの?行きたい時に行くんだよ。」と言われるんですよ(笑)。やっぱりそういう自由な時間は好きですし、インドという国も未だに好きですね。

国際政治、歴史認識問題を学ぶために日本の大学へ進学。過去の経験を活かし、日本を改革したい。

-なぜ日本の大学に進学したのですか?

元々は、カナダのマウントアリソン大学に進学する予定だったのですが、祖母の一言をきっかけに、日本の大学へ進学することを決めました。

日本に一時帰国した際に、祖母と話す機会があったんです。僕にとって、祖母は両親以上に距離が近い存在なので、自分のアイデンティティについて話をしました。結論、「自分は日本人だと思っている」という話をしたんです。そうしたら、祖母から意外な返事が返ってきました。「日本人だと思っていることは良いけど、国籍やパスポートが日本なだけで、漢字も読み書きできなければ、敬語も使えない。下手をしたら標準語も喋れないのに、それで日本人を名乗って恥ずかしくないの?」と、言われたんですよ。今まで祖母に厳しいことを言われたことは1度もなかったので、ハッとして、マウントアリソン大学を辞退して日本の大学に進学することを決意しました。

日本の社会に慣れること、日本語をネイティブに戻すこと、歴史認識問題や国際政治を学ぶこと、この3つの目的を元に日本の大学を探した結果、関西学院大学に決めました。

 

-再び日本に適応することが目的だったんですね。歴史認識問題や、国際問題に興味を持ち始めたのはどうしてですか?

それは僕の生まれが関係しています。小さい頃から、日本とインドの血を受け継いでいることを理由に、様々な経験をしてきたんです。

2歳の時に日本の保育園に通っていたのですが、ある日、母が風邪を引いたので、代わりにインド人の父が保育園に僕を迎えに来たんです。ところが、父がインド人だとわかったその日から、保育士達に変な目で見られるようになってしまって。今はもう大丈夫ですが、それが当時はかなり大きなトラウマでした。

更に、カナダにいた時には「日本人だから」と言う理由で同じ学校の生徒3人にボコボコにされ、アメリカに行ったら人種問題に関していろいろと意見を言われ、インドではアジア人に歴史認識問題を指摘されました。「なぜ僕自身は何もしていないのに、外部的な要因で敵意を向けられるんだろう?」と疑問でしたし、単純に沢山嫌な思いをしたので、それらの経験を理由に大学では国際政治や歴史認識問題などを学びたいと考えるようになりました。

「若者たちが、自分にとって良いこと・悪いことを見極める手助けをしたい。」

-将来の展望について教えてください。

まず、すごく遠い未来のことを言うと、やっぱり日本のキャリア教育を改善したいです。また、自身もその上で価値ある人材でありたいです。それが僕の夢であり、現在はそのために色々と勉強をさせてもらっています。

でも逆に、大きな夢を除くと小さい目標はあえてあまり設定していません。HRの道からは外れるつもりはないので、その中でスペシャリティを身につけ、どんどん景色を広げていきたいです。もしかしたらコンサルタントを辞めて人事部に行くかもしれないですし、もしかしたら会社自体辞めるかもしれないですし(笑)。でも現状は、少なくとも今の仕事を続け、社内で挑戦しながら仕事を頑張りたいです。その上で、シャルマ個人として、自分よりももっと下の世代の人々に何かしらのきっかけを与える活動を続けていきたいなと思います。

実は、僕は日本の就職活動が大嫌いなんです。大人たちが目先の利益ばかりを求めるが故に、若者の未来を潰してしまう可能性があると思います。なので、もっと学生さんたちに「何が自分にとって良くて、何が自分にとって良くないのか」という思考を持ってもらうための手助けをしたいです。

あとは結婚願望もあるので、30歳までには結婚したいですね(笑)。

 

-最後に、イベントに参加者の皆さんに一言アドバイスをください!

当日は「他者を主語にして考える」というテーマでお話をさせて頂きます。

「他者を主語にして考える」には、そもそもポジティヴな要素と、ネガティヴを払拭するための要素が含まれていると考えています。ポジティヴな意味では、他者を第一に考えることで、相手が考えていること・インサイトを理解して、より良い価値を届けることが出来ます。また、自分の意見に対抗されたときに、自分の見え方を気にして発言できなくなってしまう人にとっては、他者を主語にして考えることで、「彼はこう思っているから今こう言っているんだ」と自己肯定感を下げずに話すことができ、ネガティヴを払拭できると思うんです。

他者を主語にして考えることで、自分と相手の双方にとって、良い利益を生み出していきましょう。当日お会いできることを、楽しみにしています!

シャルマさんが登壇するイベントはこちら
文/吉田海音 写真/森本啓太